米粉を深く知ろうとした時に必ず耳にする会社がある。
米粉製粉機を製造する『㈱西村機械製作所』だ。

現在市場に多くの米粉が存在し当たり前にパンやお菓子などに使われているが、実はその米粉の大半は西村機械の製粉機で作られている。

今回は、時代と共にどのようにして今の米粉が出来上がってきたのか3代目社長の西村元樹社長に色々と聞いてみた。

西村氏は機械工学科の大学を出て機械を売る仕事や海外に行く仕事がしたく思い、商社に入社しサラリーマンとして勤務。

その5年後、実家の家業を継ぐ話がきて承諾し大阪へ戻り家業を継ぐ形になったそうだ。

その当時は業績や会社内の雰囲気もあまり良くなく、改善点を模索していく中で『うちの強みは何だろう』と自問自答の日々の中で当時から行っていた事業で団子用やせんべい用の上新粉などを製粉する機械を作っていたのでその分野をもっと伸ばせないかと考えたと話す。

当時は売上全体の5～10%だったが現在は20～30%まで拡大した。

米粉の製粉機械としてのシェアは近年ではなんと80%程度と国内の殆どの米粉は西村機械の製粉機で出来ているほど米粉製粉機のシェアを独占している。

ではなぜ、これほどまでに米粉が西村機械の製粉機で作られているのか聞いてみた。

そもそも米粉を作る際に米から粉に粉砕する方法として大きく分けて2種類ある。

１つは乾式という方法。単に米を砕いて粉にする方法で比較的簡易なので他のメーカーでも作る事が出来る。

そしてもう一つが米に水分を含ませてから粉砕する湿式という方法だ。

湿式とは読んで字のごとく米に水分を含ませ湿らせてから粉砕する製造方法である。

西村機械はこの湿式にこだわり独自の技術開発を繰り返し湿式方式の米粉製粉機を開発していった。

湿式方式では米を一旦湿らせる事により米粉の粒子を細かく粉砕する事が可能になり、デンプンの損傷を防ぐことが出来る。

また米粉の粒子に傷が入らないので余分な水分が入らない。

一方乾式で粉砕した米粉は粒子に傷が入っているのでそこから余分な水分が入ってしまう。

その結果、同じ品種の米を使っても乾式に比べ湿式で製粉したパン生地は、余分な水分が入っていかない為、軽い食感に仕上がる。

要するに断然美味しい米粉パンを作る事が出来るという事だ。

西村機械の強みであった湿式の技術に研究開発を重ねて、特許なども取得し、ユーザーの使い勝手なども常に考え小型化なども行い、美味しく使い勝手の良い米粉製粉機メーカーとして圧倒的に支持をされ米粉製粉機のシェアを独占するまでになった。

昨今、米粉がブームとなっているが、実は2009年頃にも一度農林水産省の後押しもありブームになったが下火になった苦い経験がある。

当時の米粉ブームが下火になった理由として、当時の米粉は殆んど乾式のものが多く『美味しい米粉が無かったから』というのが主原因だったと考えられている。

しかし、2023年頃から始まった今回の第2次ブームに関しては、確実に米粉の消費量が増加しており、もはやブームではなく、小麦に代わる万能粉として確実に定着しつつある。

それは、やはり『美味しい米粉が出来た』事がなによりもの理由だろう。

その美味しい米粉の殆どが西村機械の製粉機無しでは作る事が出来ないので、西村機械が今の米粉ブームの立役者の一人である事は間違いない。

そんな米粉ブームの仕掛け人のお気に入り米粉料理はシフォンケーキやバウムクーヘンだという。

そして麺類について尋ねたところ、米粉市場を見続けてきたからこそ、米粉で麺類、特にうどんは難しいという印象があったそうだ。

そこで最初本格的なうどん屋さんで米粉のうどんを扱っているお店が大阪堺市にあると聞いて、珍しいと思い食べに行ったところ言われなければ小麦と変わらないくらいもちもちとした食感でコシがあって、出汁との絡みも良くびっくりしたという。

それが現在の『さぬきごえ』を開発したうどん店（手しごとうどん工房はちまん）だ。

今までも、色々と米粉麺を持って帰り家で子供たちに食べさせていたが子供は正直で『いらんわ～』と残す商品もある中、ココの米粉うどんに関しては『旨いわ～』と完食したのでそれが答えだなと思いました。と感想を述べていた。

今年創業90年、まもなく100年企業になるになる西村機械だが、今後の展望を聞いたところ『いずれ世界で…』と含みを持たせていたが、戦前から国内の米粉市場を支えてきた西村機械が次の100年では世界の『NISHIMURA』として世界中の米粉市場で活躍をしているかもしれない。